仙川
- 2005/03/15 21:48
- Category: soliloquy

今日は仙川に遊びに行ってみることにした。
仙川は、自宅から徒歩で往復すると、ちょうど気が済むくらいの距離にある。
まずは、車道の脇の細い歩道をひたすら歩く。
途中で「宗教団体アーレフ」の広報部長らしき人とすれ違う。
無宗教者も信者も関係なく、天気の良い日は散歩してみたくなる。
そこに問題は、全くない。
旧甲州街道をずんずん下っていると、
ランドセルを背負った低学年の女子小学生が二人、いつのまにか私の前を歩いていた。
下校中の仲良し二人組なのか、小鳥のようにじゃれ合っている。
阿部和重氏の『グランド・フィナーレ』とオーバーラップするワンシーン。
彼女らが左折したあと、
小学5~6年でツインテールの女の子が一人、こちらへ向かって直進していた。… が、
目の前3mほどの所で私の後方に愛犬を見つけたらしく、
突然「テリー!」と呼んで走り出した。
その声はとても澄んでいて、ココロが洗われるような、なんというか、
何百年も受け継がれてきた伝統技術を持つ匠が全力で腕をふるい、
魂を吹き込んで作り上げた銀の鈴が鳴ったかのような、本当にそんな感じの、
一心で、天にも届く美しい声で、
私の頭にも録音された。
それからしばらく「テリー!」を反芻したり、
ヒヨドリを見たり、雀の声を聴いたり、
こんにゃく工場の前を通ったり、手作り陶器の店を覗いたり、
暖かさに上着を脱いだり、飛散する花粉の量に驚いたり、
どこからか漂う沈丁花の香りを愉しんだり、
青空を仰いだりしながら歩いた。
仙川に到着。
橋の上から川面を覗き、暫くぼぅとする。
なんのことはないごく普通の川だけど、小さな中州にはセキレイとカモとシギがいて、
せせらぎはキラキラ反射していた。
車椅子の老婦人を押しながら、私と同じくらいの年齢の女性が川沿いの道を歩いている。
彼女はお嫁さんなのか、ヘルパーさんなのか、介護職員なのか、
いずれにしても、二人とも楽しげで幸せそうだった。
いろいろなものを見た。いろいろなものを聴いた。
散歩はいいな、とあらためて思った。